不思議な少年いちきくんと過ごした不思議な時間

今日の夢に出て来たのは、渡邉くんではなく、市来くんでした。

大学一年生の時に、好きかもしれなかった男の子でした。

なんとかゼミ、初めての授業、初めての教室に行くと、窓際に、彼だけが立ちすくんでいました。色が白くて、背は170センチはあるけど猫背で、顔が小山田くんに似ていました。

私は、ハッロー、初めましてぴょーん、と、マイネームを言い、ヒズネームも聞きました。表情や人の顔を見て話ができないところ、声が小さすぎるところから、すぐにわかりました。私の村の人だと。

彼は気まずそうに、長机に移動しました。すると、驚くべきことに、私も彼の後をついていって、隣にストーンと座ってしまいました。

ウケる…彼は、私とおしゃべりするのがつらかったから、移動したのに、隣に座られてしまい、逃げ場がないまま、他の生徒や先生が来て、授業が始まりました。

ふ…さすが、察することのできない女は違います☆

授業が終わったあとも、一緒に帰ろっ!と言って、駅まで帰りました。彼は、町田の団地に住んでいて、小6の妹がいて、高校では吹奏楽部に入っていて、和光を選んだ理由は家から近い、ただそれだけで、普通の18歳が持ってる生気がまったくなく、人生を達観した、老人みたいな渋さでした。街に出るのも、電車代がかかるから億劫と言っていました。

そして、歩くのが速く、私は競歩をしている日出郎さんみたいにサカサカと歩かなくてはいけませんでした。

あれは、たまたま会ったのだろうか。図書館で話をしたことが今でも印象に残っています。彼は、古典が好きで得意だったらしく、おもしろいよって言ってくれました。ちょっと生気が出てました。

そして、いつか、階段の下でお昼を一緒に食べてた時がありました。どうしてそうなったのか不明なのですが、彼が私を誘うわけはないので、私が誘ったのでしょうねえ。フェンスの向こうには、ロマンスカーが行き交い、学食なんて、派手な場所には行くつもりのない私たちは、人気のない場所で何かを一緒に食べました。

その時に、私はおそらく、私はこんなにおしゃべりでおもしろくしてるけど、ほんとは暗くて人といるのはつらいの。なんて、言った気がします。彼は、どうして友達たくさんいるの?みたいに聞いてきて、「別に、好きなわけじゃないの、友達を。ほんとはつらいんだ」まで、私は言ったかな。言っちゃった気がします。同じ村民なのに油断して。

すると、彼は「つまらないのはいいけど、つらいのはよくないよ」と言いました。私は、目から鱗で、この人、すごいなと思いました。そして、自分はまだ大学に友達なんていなくて、知り合いも「あなただけしかいない」と言いました。

あなただけ

恋のチャッカマンがカチャッとスイッチが入るのに、最適な言葉ですね。ちなみにもう1つは「初めて」です。あなたにこれを言うのは、初めてなのなんて言われたら、チャッカマンがブオっと火を吹きます。

私が、彼の名前の漢字を当てた時、「当てた人に初めて会った」と彼は言いました。(ただいちきのいちは、市じゃなくて、一だったような気もするんですけど…)

私は、根暗で老成していて、静かに物事を深い目、そして俯瞰で見られる男の子が素敵だなと思うので、会って、3回目かそこらで、「私は、あなたみたいな人を素敵だと思うの。だから、一緒にお昼を食べるか、一緒に駅まで帰りたいの。あなたを好きかもしれないの。でも、あなたの嫌なことはしたくないから、大丈夫ならそうして欲しい」と言いました。

「好きかもしれない」という告白の方法は、あんまりポピュラーじゃないんじゃないでしょうか。これは、振られても、傷つくのが減るというメリットがあるのと、確かに人は、自分を好きな人のことしか、本気で好きにはなれないので、いくらこっちが好きでも、向こうが私を嫌いなら、意味ないわけです。

だから、先に伝えておくんです。

彼は、逡巡したのち、お昼は無理だけど、帰るのはいいよ、と言いました。そして、火曜日と木曜日に一緒に帰ることになりました。

授業シーンに戻ります。皆が自己紹介し合ってる時、私はもう彼と一緒にいたりして、名前を知っていました。彼は、何度も言いますが、小山田くんに似ていました。そして、同じ班には、岡田山田がいました。私が彼女たちにいじめられるようになった理由には、もしかしたら、いちきくんと仲が良かったからというのがあったかもしれません。

しばらくして、他のお友達に、わたしたちは付き合ってるように見えたと言われました。無口な彼が、私とは一緒にいて、小声ながらも、何かを一応会話しているせいかと思います。

一緒に帰っていくうちに、彼の歩くスピードはゆっくりになっていき、好きなミュージシャンは、うーん奥田民生かなとか、だんだん心を開いてきてくれるようになりました。ホームで、彼は私に何かを一生懸命言いました。しかし、運悪くロマンスカーが通り過ぎてしまい、まったく聞き取れなかった私は、聞き直しました。でも、まだ聞こえず、3回はん?と聞きました。でも…それでも、聞こえなかったので、あきらめました。

あれは…何を言おうとしてたんだろう。今でも永遠の謎です。

しかし、雨の火曜の悲劇が起きてしまいました。

待ち合わせの時間に、待てど暮らせど、彼は現れませんでした。大雨の日でした。私は、基礎が、もう自分が大嫌いで、自信がなく、全男子は自分を嫌ってると思い込んでるので、そうか…いやだったんだ、私のこと嫌いだったんだ…と、ぬれねずみで帰り、あろうことに、母校の高校までそのまま行ってしまいました。好きだった、英語教師のことを思い出したんでしょうねえ。

「今まで、先生に会った回数より、死ぬまでに会える回数の方がうんと少なくて、たぶん3回ももう会えないと思ったら、もういてもたってもいられなくなったの」って、訴えました。先生は、ぐさっと来たようで、固まってしまいました。

そうです。いちきくんが素敵だなと思ったのは事実ですが、私はまだ絶賛、チョモランマ失恋状態だったので、なんとかニューボーイを見つけて、先生を忘れなくてはと必死だったんです。それが、ちょっとしたエラーで、元の状態にぼーんと戻ってしまった。

しばらくして、友人が、この前、いちきくんが図書館前で、人待ちしてたの見たよ。もしかして、待ち合わせの日を間違えただけじゃない?と言いました。ああ!そんなこと思いもしなかった。

そして、学内で会った時、それを聞いてみると、まさにそれでした。

嗚呼…別に彼は私を嫌いになったわけでもなく、かわいそうに、違う日に待ってくれてたんだ…当時、どっちも携帯なんて持ってなかったので、すれ違ったら、もうそれでアウトでした。

しかし、私は、もう、先生へのラブが、バンドラの匣から出てしまい、そっちにぼーっとなってしまったので、遅かったんです。

ある日、遅刻して、彼と同じ授業に行ったら、なぜか、彼は教室の外の廊下の壁にいました。それ以来、一緒に帰らなくなり、避けてるように見える私のことを待って、確認したかったんだと思います。

当時は、もちろん、まさか、そんなことありっこないよ、たまたまだよと思ってましたけど、そうだったと思います。

その後、彼はオタク的なお友達を見つけ、いつもグループ行動、真夏でもいっつも、チルデンセーターを着て、前髪が乙部のりえみたいになっていて、目が見えてませんでした。その頃には、すれ違っても、挨拶はしなくなっていました。

そのルックスを見る限り、ん?なんか変な人なのかな…という気持ちがぬぐえませんでした。

でも、何度も言うように、顔は小山田くんに似ているため、掲示板の前で、女子に話しかけられたりしていました。

私が登校拒否になったあと、彼はどうしてたんだろう。そして、今は何をして、どんな大人になってるんだろう。

超気になる…

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